大器、仲邑菫二段~張栩九段が語る資質【コラム:品田渓】


 第33期女流名人戦の挑戦権を仲邑菫二段が獲得した。挑戦手合開幕時の仲邑二段の年齢は13歳1ヶ月。藤沢里菜女流名人が持つ、女流タイトル最年少挑戦記録(2014年・女流本因坊戦)、16歳0ヶ月を大幅に更新する快挙だ。周囲の予想を上回るスピードで成長を続ける仲邑二段。なぜこれほど強いのか、何がそれほど強いのか、ナショナルチームのヘッドコーチであり、仲邑二段が英才特別採用で入段する際に試験碁を打った張栩九段に話を聞いた。


  • - 女流名人リーグを5勝1敗で終え、仲邑二段が藤沢女流名人への挑戦権を獲得しました。現時点で仲邑二段の実力はどのくらいだと思われますか。
  • ● 正直なところ1局ごとに成長しているのでうまく測れません。数ヶ月前まで、さすがに挑戦は難しいだろうと思っていたのですが、結果はご覧のとおりです。
  • - 13歳という年齢でこの活躍は驚かれましたか。
  • ● そうですね。ただ、9歳で試験碁を打った時の衝撃を考えると、そういうこともあるかなと思うところもあります。
  • - 当時、どのように感じられたのか改めて教えてください。
  • ● 9歳という年齢であれほどの碁が打てるというのは本当に衝撃でした。井山裕太名人と打った時も同じような衝撃を感じましたが、それに匹敵します。棋力だけではなく、目力や対局中の雰囲気からもただものではないなと。あの時点で十分にプロとして通用すると思いました。
  • - 3年でどのように成長したと思われますか。
  • ● あれだけ注目を浴びて、期待された中での入段だったので、プレッシャーは大きかったと思います。しかし、その中でいいペースで成長している。何事にも動じない精神的な強さがあります。今回のリーグにしても、確実にいい経験を積んで、さらに成長していると思います。
  • - 女流名人リーグが開幕する前、仲邑二段が挑戦すると予想されましたか。
  • ● 数ヶ月前に練習対局を打った時には、挑戦はまだ難しいと思っていました。仲邑二段の場合、あれ?こんなに強かったっけ?と思うことがよくありますね。研究会の成績と手合の成績を見比べると手合の方が断然勝率がいい。
  • - 本番に強いのですね。
  • ● 大舞台になればなるほど驚かせてくれる、とても可能性を感じます。
  • - 仲邑二段の強さはどんなところにあるでしょうか。
  • ● 棋譜を見るととてもよく勉強しているのが分かります。あと、悪くなっても勝負を投げ出さない勝負強さ。中国の周泓余六段(女子の主要な国際棋戦で優勝経験のある強豪)に勝った碁は絶望的な形勢でしたが、最後まで諦めずに相手のミスを引き出しました。相手が崩れてくれたのは運がよかったとも言えますが、その運は運を引き寄せる打ち方をしなければ掴めません。それから・・・かわいいです。
  • - かわいい、はその通りだと思いますが、碁の強さに関わることでしょうか。
  • ● 容姿がという意味ではないですよ(笑)。ついこちらが教えたくなる可愛げがあるという意味です。正直なところ、ライバルになり得る人に技術を教えるのは損でしかありません。でも、仲邑二段はコミュニケーション力があって、人の懐に入るのがとてもうまい。上手から可愛がってもらい教えてもらえれば、より強くなるために必要な環境や情報が手に入ります。「かわいい」はとても重要な資質です。
  • - 確かに、張九段をはじめ、一力遼棋聖や藤沢女流名人、トップ棋士の先生方が仲邑二段を特別目にかけているという印象があります。仲邑二段の棋風についてはいかがでしょうか。
  • ● ヨミのレベルが高く、勝ち負けにつながる部分の判断が正確です。つまらないミスをしない。ヨセ勝負もできますが、どちらかといえば手厚く打って相手の弱点を狙う、戦いの碁だと思います。
  • - もうすぐ藤沢女流名人との挑戦手合三番勝負が始まりますが、仲邑二段がタイトルを奪取する可能性はあるでしょうか。
  • ● どうでしょう。藤沢女流名人の終盤力は神がかったものがあります。現時点ではまだ仲邑二段の実力は至っていないと思いますが・・・。ただ前述したように仲邑二段は大舞台になればなるほど強い。まだ差はあると思うけれど、やってみないと分からないと感じさせるものがあります。
  • - 仲邑二段は常々、中学生のうちに女流タイトルを取るのが目標だと話しています。
  • ● もちろんそれは彼女にとっては具体的な目標でしょう。しかしそれは本当にすごいことです。今の女流のレベルは歴史上最も高い。その時代にトップに立つというのはとても価値あることだと思います。
  • - 仲邑二段の勝負師としての器の大きさが、お話をうかがう中で見えてきた気がします。ありがとうございました。
記・品田渓


仲邑菫二段は第33期女流名人リーグを5勝1敗で終え、3月31日に藤沢里菜女流名人への挑戦権を得た。