国際女流棋戦・SENKO CUP直前スペシャル(第4部)―世界一を目指せ!日本選手団(後編)「つるりん式観る 碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段




 4月8日から始まるSENKO CUPワールド碁女流最強戦2022スペシャルも今回が最終回。Webコラム「こぼれ話」では今週新たに「神色自若」の称号をつるりんから与えられた藤沢里菜扇興杯と、共に女流碁界を牽引している上野愛咲美女流棋聖の2人をご本人のコメントと共に改めて紹介します。


【 藤沢里菜扇興杯 】


 5棋戦ある女流棋戦(年齢による限定棋戦を除く)のうち4つを有する絶対的なエースです。一般棋戦でも、ほぼ毎年七大タイトル戦の本戦入りをするなど、活躍の幅は女流の域を超えています。最大の特徴はその後半力。あまりに冷静かつ正確にヨセるので「少し形勢がいいくらいではまったく勝てる気がしない」とつるりんは言います。
 昨年女流本因坊戦で挑戦手合五番勝負を戦った星合志保三段は藤沢扇興杯について「細い糸を手繰り寄せるような勝負強さがすごい。棋譜に表れる着手以外の強さを実感した」と話していました。謝依旻七段が炎のような気迫なら藤沢扇興杯は氷のような気迫。たとえ形勢が良くても、ピタリと背後に付かれヒタヒタと距離を詰められると、まるでスナイパーに狙われているかのように背筋が凍るといいます。時間の使い方も絶妙で、大事なところでしっかり考えるけれど不必要に悩むことがない。「勝負師」の究極体のようなプレーヤーです。

本人コメント
「また今年もSENKO CUPを開催していただきありがとうございます。今からとても楽しみです。全力を尽くしていい結果を残せるように頑張ります」。


【 上野愛咲美女流棋聖 】


 大舞台でも楽しく、自分らしく打てる、すごい度胸の持ち主。勝っても負けても楽しく笑って碁を打てる精神力から、つるりんに「笑門来福」の称号を与えられました。竜星戦で準優勝したり、女性最強の崔精九段相手に勝ち星を挙げたり、周囲があっと驚くようなことを自然体でしてしまうような凄みがあります。
 棋風は個性的な「ハンマー流」。はっきり2眼で生きていない限り、どんな石でも狙いの範疇。ハンマーを振り下ろすような重い一撃を繰り出します。中盤の破壊力から、後半勝負になることが少なく、以前はややヨセが苦手だったそうです。しかし女流棋戦で藤沢扇興杯に何度も逆転負けを喫し一念発起すると、本格的にヨセの強化に乗りだしました。その結果、昨年11月には広島アルミ杯・若鯉戦優勝、今年1月には女流棋聖を防衛するなどの成果をあげています。

本人コメント
「日本主催の世界戦に参加できてとても光栄です。昨年(3位)以上の成績を目指して頑張ります」。

記・編集K