「応援が力に」外柳是聞三段―新人王戦囲碁将棋合同表彰式【コラム:品田渓】


 囲碁第46期新人王外柳是聞三段と将棋第52期新人王、伊藤匠四段の表彰式が12月4日、東京都港区の「明治記念館」で行われた。

 囲碁と将棋、合同で表彰式を行うのが新人王戦ならではの伝統だ。別の競技ではあるが、こうして両新人王が並ぶと、囲碁と将棋は分かちがたい関係にあるのだと再認識させられる。
 囲碁の外柳三段は岩手県出身の26歳。決勝三番勝負で上野愛咲美女流棋聖を2勝1敗で破り、年齢制限によるラストチャンスで有終の美を飾った。
 一方、将棋の伊藤四段は昨年プロ入りしたばかりの19歳。現在在籍する棋士の中で最年少だ。藤井聡太四冠と同学年で、今回新人王を獲得した他、王位リーグ入りするなど将来を嘱望されている。

外柳三段の謝辞

 兄弟子の許家元十段富士田明彦七段が新人王を獲得していたので、自分も新人王は目標でした。でも、プロになって、思うように勝てない中で自分への期待値が低くなってしまい、新人王という目標がどこか遠くになっていました。 決勝まで勝ち上がった時も「優勝できるかもしれない」という前向きな気持ちよりも「注目される中でひどい碁を打ってしまったら」という後ろ向きな気持ちが強く、不安でした。しかし多くの方から応援していただいて、だんだんと「勝ちたい、優勝しなければならない」という気持ちになっていきました。
 同年代や下の世代がすでに活躍していますが、自分も少しずつ成長していきたいです。

伊藤四段の謝辞

 新人王を獲得することができて、嬉しいと同時にホッとしています。多くのトップ棋士が新人王を獲得されているので、ぜひ自分もと思っていました。今回、優勝することができて、自信も付きました。
 決勝三番勝負第一局の3日前に、カギを忘れて家を出てしまい、台風の中家族の帰りを外で待つはめになり、風邪をひいてしまいました。こんな状態ではダメかと思いましたが、回復してなんとか勝つことができました。今まで体調について考えてきませんでしたが、体調管理の大切さを痛感しました。
 今回、優勝することができて、師匠に少し恩返しができたのではないかと思います。ありがとうございました。


 新人王戦はトップ棋士への登竜門で、多くの棋士が新人王を獲得したのち、大活躍をしている。歴代優勝者には井山裕太棋聖山下敬吾九段などそうそうたる顔触れが並ぶ。

 祝辞では外柳三段の兄弟子、富士田七段が「決勝の相手が上野女流棋聖ということで、いつも以上のプレッシャーだったと思いますが、堂々と戦って勝ち切りました。自分のことのように嬉しかったですし、師匠(故・高林拓二七段)も喜んでいると思います。大きく成長したと思うので、一日一日を大切に、今後も頑張ってください」とエールをおくり、伊藤四段の師匠、宮田利男八段は「伊藤、よかったねー。関係者に『今後伊藤四段は藤井聡太四冠とタイトルを争いますか?』と聞かれたから、『24歳までに必ず戦います』と言っておきました。そのためにも、酒とギャンブルは25歳までは禁止ね。(関係者の)みなさんも勧めないでくださいよ(笑)」とユーモアを交えて激励した。

 囲碁と将棋、両方の新人王が今後どのように成長していくのか、一ファンとして楽しみでならない。

記・品田渓

(※ 外柳三段は12月7日付で四段に昇段しました)


トロフィーを持って記念撮影。右・外柳是聞三段、左・伊藤匠四段。


師匠に代わって外柳三段に祝辞をおくる富士田明彦七段


囲碁ファンでもある宮田利男八段。伊藤四段への祝辞の冒頭「最初は上野女流棋聖を応援していましたが、外柳三段が私の出身地である秋田県の隣、岩手出身と知って、そこからは外柳三段を応援していました。おめでとうございます」と外柳三段にお祝いの言葉をかけた。