手つき初段【コラム:内藤由起子】


 昨年8月末、将棋の渡辺明名人が名人戦の控室においでになり、趙治勲名誉名人と囲碁と将棋の二面打ち・指しをされたのはご存じの方が多いと思います。

撮影:著者


 私は週刊碁の取材で現地にいまして、せっかくの機会と思い、自発的に記録係をさせていただきました。
 渡辺名人は指が長く手が白くきれい。さらに手つきも素晴らしい。
 囲碁と将棋は、着手の仕方はほぼ同じのようですから、当然といえるでしょう。

 テレビで俳優さんが強い棋士の役をされたとき、手つきが下手だとがっかりします。
 記者室で偉い棋士の先生がたが雑談をしながら、「あの俳優の手つきがなあ」と話しているのもたびたび耳にしています。

 依田紀基九段は将棋好きなようですが、なかなか上達しないよう。
 依田九段が名人だったころ、挑戦手合が終わった夜、将棋をされたことがありました。
 囲碁と同じように力強くばしっと指されるのですが、そのたびに将棋好きの人たちが大笑いでずっこけていました。その姿に依田九段も大笑い。
 その手つきでその着手?!
 あまりのギャップだったのですね。
 このあと、名人就位式で依田九段は将棋連盟から初段の免状を授与されていました。

囲碁ライター・内藤由起子