世界を目指す「いち研」―夢が膨らむカルテット「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段

 今回は本因坊戦挑戦手合七番勝負で本因坊文裕と白熱した戦いを繰り広げている一力遼棋聖が登場しました。当てられた四字熟語は「英俊豪傑」。英・俊・豪・傑、どの字を取ってもふさわしい人は一力棋聖をおいて他にはいない、というのがつるりんの見解です。

 さて、そんな一力棋聖が主宰の、とある研究会が話題となっているのをご存知でしょうか。その研究会の名前はズバリ「いち研」。メンバーは一力棋聖、藤沢里菜女流本因坊福岡航太朗三段仲邑菫二段の4人だけ。棋聖&女流本因坊という日本碁界の頂点に立つ2人と、いずれ頂点に立つだろう若手2人が共に時間を過ごしている・・・。最高に濃密な空間ですね。




 一力棋聖が率いるいち研、入りたい人は大勢いると思いますが、一力棋聖は今後も新たなメンバーを入れずに4人で続けていきたいと考えているそうです。4人だと一日早碁で3局打てばメンバー全員と打てる。「ちょうどいい規模」なのだとか。一力棋聖はこの研究会の趣旨について「後継者を育てる意味もある」とおっしゃいました。福岡三段と仲邑二段へどれほど期待を寄せているかがうかがえます。
 「でも」と私、編集Kは思いました。「後継者を育てることは自分の脅威になる人物を育てることになってしまうのでは?」。疑問をぶつけると一力棋聖はこう答えました。「たしかにそういう面はあると思います。でも、囲碁は国際戦があるので、全体が強くなることが大切です」。
 「いち研」がスタートしたのは昨年の1月から。その後のメンバーの活躍は目を見張るものがあります。一力棋聖は棋聖位を井山裕太名人から奪取し、藤沢女流本因坊は次々と一般棋戦で本戦入りし、福岡三段は国際戦で中国、韓国の若手トップに勝利。そして仲邑二段は女流名人リーグで挑戦者に駆け上がりました。
 「いち研」は下の世代にとってはもちろん、上の世代にとっても大切な場になっているような気がします。相互に刺激し合うから、相乗効果で結果が出る。4人が織りなすハーモニーはいつか世界に届くに違いありません。

記・編集K