悟りは盤上にあり−「修行棋士」志田達哉八段「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段

 今回は中部の個性派棋士、志田達哉八段が登場しました。今期名人リーグでは3勝2敗と挑戦圏内に付けている実力者です。




 ところでこの志田八段、私、編集Kのリサーチによればかなりコアなファンが多いです。そして、告白しますと、私、編集Kもそのコアファンの一人です。めったに声を聞くことができないと言われるほど寡黙な人柄で、棋風はめっぽう実利にカラく、一言で言えば「渋い碁」。華々しさとは対極にあるけれど、そのたたずまいには他の誰にも出せない「静寂」があります。
 対局時の志田八段の空気はとても静かで揺らぎがないので、以前、「冷静沈着」の回でも候補に上がったことがありました。けれど、りんによって却下されました。「志田くんの静かさは冷静とは違うね。だって冷静沈着って人が色々葛藤を感じているのを意識して抑えてるって感じでしょ。志田くんは葛藤そのものを無くそうとしてるもん。あれは『無』もしくは『空』だよ」。「無」もしくは「空」。たしかに悟りワードがこれほど似合う棋士はいないような気がします。
 金閣寺よりも銀閣寺、きらびやかな神社より質素な禅寺が好みだという方は、間違いなく志田八段のコアファンになる素質があるでしょう。ユーチューブでは「囲碁将棋TV−朝日新聞社」による名人リーグの生中継が観られます。対局は修行、悟りは盤上にあり。志田八段の魅力に触れたい方はぜひご覧ください!

記・編集K