碁界の「桃太郎」佐田篤史七段が「鬼ヶ島」に一緒に行きたい仲間たち「つるりん式観る 碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段

 今回は情報通でサービス精神にあふれ、人徳がある、できる男、関西棋院の佐田篤史七段を取り上げました。次回からはつるりん+佐田七段で関西棋士をご紹介します。

 ところで、佐田七段には異名があるのをご存じでしょうか?えっ?ご存じない??ぜひ、覚えてください(笑)。岡山県出身かつ昔話に出てきても違和感がない老若男女に愛される好青年ということから、佐田七段は「桃太郎」と呼ばれています。
 ということで、今回は碁界の「桃太郎」、佐田七段が鬼ヶ島に行くとしたら、誰と行きたいか、を聞いてみました。なお、佐田七段は「お伴に連れたいは失礼過ぎて無理です」というので、あくまでも上下関係のない仲間として鬼退治に行くことでご了承いただきました。また、昔話の桃太郎パーティーが3匹なので、碁界の桃太郎パーティーも3人とします。鬼ヶ島の鬼は碁の鬼ではなく、一般的な赤鬼や青鬼を想定しています。




(●=佐田七段、インタビュアー=編集K)
  • ―― まずは1人目お願いします。
  • ●  そうですね。ここはもう決まっています。中部総本部の大竹優六段です。
  • ―― 理由をお願いします。
  • ●  大竹くんはニコニコしてて優しいイメージを持ってる人が多いと思うんですけど、実はめちゃめちゃ行動力があってカッコいいんです。
  • ―― たとえば、どんな風にでしょうか?
  • ●  人と会うとかちょっと遠方の研究会に行くとか、僕も含めほとんどの棋士は、タイミングが合えばとか、落ち着いたらとかいいながら、なかなかできないでいることが多いと思うんですけど、大竹くんは本当にすぐに実行に移すんです。僕も大竹くんに「佐田さんと話したいので今度行きます。いつ予定空いてますか?」って聞かれたことがあります。どんなことでもそんな感じで、何気なく「○○をやりたい」と話したことでも、次に会った時に「そういえば○○どうなった?」って、聞くと必ず何かしら進展してるんですよ。
  • ―― フットワークが軽くて有言実行なんですね!
  • ●  そうなんです。実行力の面で彼は絶対に欠かせません!


実は行動力があって頼れる存在、大竹優六段 提供:涼暮さん

  • ―― では、2人目をお願いします。
  • ●  う~ん。ちょっと怖いですけど、関西総本部の小松大樹四段で。
  • ―― 理由をお願いします。
  • ●  小松先輩は「大阪こども囲碁道場」でお世話になっている先輩です。とても頼れる人で、まず人脈がすごい。大阪中の研究室や道場、碁会所に繋がっています。そして、判断が具体的で現実的。もし「鬼ヶ島に持っていく武器が足りない!」ってなったら、「そんじゃ、○○研究室に野球のバット置いてあったから借りよか」とか、すぐに解決してくれそうです(笑)。
  • ―― それは助かりますね!でも、さっき、ちょっと怖いとおっしゃっていましたよね。なぜですか?
  • ●  それは...、小松先輩は判断が現実的で具体的だから、たまに冷徹な時があるんです。僕が桃太郎なのに、僕がヘタッたら、「桃太郎いると鬼退治は難しいから置いていくで」って言われそうで(笑)。
  • ―― そ、それは...。物語を変えてしまう(笑)。たしかにちょっと怖いですね(笑)。
  • ●  その点、同じく「大阪こども囲碁道場」でお世話になっている吉川一四段は情に厚いので置いていったりはしなさそうです。でも、やはり鬼退治のことを考えると、小松先輩のような冷静さが必要になると思うんですよね。


クールな現実主義者、小松大樹四段 提供:佐田篤史七段

  • ―― では、ラスト、3人目はどなたにしましょう?
  • ●  今年NHK杯に初出場する関西棋院の阿部良希三段で!
  • ―― 理由をお願いします。
  • ●  彼は堀田陽三九段門下なんですけど、この師匠の堀田先生がめちゃくちゃサバイバル力があって日曜大工やバーベキューがプロ級なんです。だから、本当は堀田先生に一緒にお越しいただきたいところなのですが、先生にはまだ先生を必要とするお弟子さんがいらっしゃるので、お願いするのは忍びないなと。で、そうなったときに、先生のそういうサバイバル力を最も色濃く受け継いでいるのが、阿部くんなんです。
  • ―― なるほど。
  • ●  堀田先生には後方支援で武器を作っていただいて、阿部くんに持たせてもらえればと考えてます(笑)。
  • ―― 仲間のバックボーンも考慮するなんて、さすがですね!
  • ●  鬼退治ですから、持っている力はすべて使わないと(笑)。あと、阿部くんは結婚してるんです。守るものがある人は強いと思うし、結婚というイベントによって、人間修行ができてると思うんですよね。
  • ―― でも、奥さまがいるのにそんな危険な任務、いいんですか?
  • ●  僕は奥さまを知っていますが、経済的にも精神的にも自立された方なので問題ないです(笑)。
  • ―― なら、安心ですね(笑)。では、碁界の桃太郎、佐田七段が鬼ヶ島に行く時のパーティーは、大竹六段、小松四段、阿部三段ということでいいでしょうか?
  • ●  はい、それでお願いします!


堀田陽三九段のサバイバル力を受け継ぐ者、阿部三段 提供:佐田篤史七段

記・編集K