「120点」許家元十段、今春を振り返る【コラム:品田渓】


 第1回テイケイ杯俊英戦では芝野虎丸九段に2連勝で優勝、第60期十段戦では余正麒八段の挑戦を3連勝で退け防衛。許家元十段は今年1月から4月中旬までの間に2つのタイトル戦を挟みながら16連勝を果たした。今年に入って強さが際立っている許十段に好調の理由や今後の抱負を聞いた。

  • ― テイケイ杯俊英戦優勝、そして十段防衛おめでとうございます。大活躍だった今春を振り返っていただいてお気持ちをお願いします。
  • ○ ありがとうございます。なんでこんなに勝てたのか分からない(笑)。運が良かったのもあるし、最近気を付けていた対局中の時間配分がうまくいって、それが結果につながったのかもしれません。
  • ― 今春のご自身に点数をつけるとしたら?
  • ○ 120点です(笑)。昨年12月の国際戦ベスト4(国手山脈最強戦)、テイケイ杯のリーグ戦全勝が自信になり、いい流れで今年を迎えられたのが良かったです。
  • ― 昨年10月の阿含・桐山杯では井山裕太名人を破って優勝。テイケイ杯俊英戦も芝野九段に2連勝。十段戦でも余八段に3連勝。大舞台での勝負強さが際立っていますが、この点についてはいかがですか?
  • ○ 阿含・桐山杯のころも連勝していて、今回のテイケイ杯や十段戦も連勝中でした。勢いのおかげかな、と思います。
  • ― テイケイ杯、十段戦を含め今年1月から4月中旬まで公式戦16連勝。相手も強敵ばかりで驚異的な記録だと思いますが、ご自身で成長を感じているところはありますか?
  • ○ 序盤の決断がはやくなって時間を残せるようになり、余裕を持って後半の勝負どころに臨めるようになりました。今まで目指していたことが少し達成できたような感じはあります。
  • ― 最近、許十段の布石研究がすごい!という評判もありますが、ご自身の手応えはいかがですか?
  • ○ すごいかどうかはちょっと分からないですけど(笑)。自分が納得するまではやっています。でも、けっこう研究内容を忘れちゃうんですよ。どうしようもない(笑)。研究した定石が出てきて自信を持って打ったら、周囲の配石の関係で実は悪かったりすることもあります(笑)。ただ以前に比べれば、序盤は良くはなってきていると思います。
  • ― 序盤で時間を残しつつ形勢もおくれないことが、勝負どころの後半にいきてくるというわけですね。
  • ○ そうですね。以前はけっこう中、終盤の勝負どころで秒読みになって大変だった。今はそこが改善されて結果につながっている気がします。
  • ― これは企業秘密かもしれないので、お答えできる範囲で。普段の勉強法を教えてください。
  • ○ みんなと変わらないと思います(笑)。AIでの布石研究や詰碁、ネット碁です。最近はネットでの早碁を増やしたいと思っています。持ち時間が3時間とか5時間の公式戦の練習にはどうかと思っていましたが、休憩時間が変更したこともあり(4月から3時間は休憩なし、5時間は30分の休憩1回に変更)、速く打てるようになって、体力的にもきつくなる後半により時間を残したいと思っています。
  • ― 最近、運動はいかがですか?また息抜きは?ゲームがお好きだった印象がありますが。
  • ○ コロナ禍になって一時ジムをやめていたのですが、最近再開して週3くらい行っています。50分くらいバイクやランニングをして、40分くらい筋トレして。また行き始めたのには休憩時間変更の影響もあって、体力つけないと、と思っています。あとゲームですか...。普通にやっています(笑)。今はシャドウバースというカードゲームですね。頭を使うので、それが微妙で...ちょっと悩んでいます。あんまり息抜きになっていないかも(笑)。自分は手合が続くと囲碁のこと考えるんですけど、2週間くらい手合がないと危ない。遊んでしまいます。
  • ― さきほど今春は「120点」とのことでした。2022年、今後に向けた抱負をお願いします。
  • ○ まだ一度も経験がない2日制のタイトル戦(棋聖戦、名人戦、本因坊戦)に出たいので、リーグ戦を頑張りたい。本因坊リーグは終わってしまったので、名人リーグと棋聖Sリーグですね。国際戦も出られる機会があったら頑張りたいです。
  • ― ありがとうございました。


第1回テイケイ杯俊英戦優勝の許十段。


第60期十段戦挑戦手合五番勝負第3局。余八段に3連勝でタイトルを防衛した。


インタビューに答える許十段
記・品田渓