躍進する女流棋士―2019~2021年を振り返る【コラム:品田渓】


 女流棋士の勢いがすごい。昨今の棋戦ニュースを見て、そう感じる方は多いのではないだろうか。「女性初」という文言が毎年紙面に踊る。数年に1度あるかどうかだった七大棋戦の本戦出場が、さほど珍しいとも思えないほど頻繁に起こる。印象として抱いていることを可視化するために、2019年から2021年に女流棋士が男女混合棋戦で残した主な記録を列挙してみた。
* 以下、タイトルではなく段位表記。段位は当時のもの。


2019年

上野愛咲美三段 第28期竜星戦準優勝
→ 全棋士に参加資格のある棋戦の準優勝、史上初

藤沢里菜四段 第45期天元戦本戦勝利
→ 七大タイトル本戦勝利、史上初

  • ● 七大タイトル本戦出場・・・1人
    藤沢里菜四段 第45期天元戦
  • ● 名人戦、本因坊戦の最終予選出場・・・1人
    藤沢里菜四段 第45期名人戦最終予選決勝進出
  • ● 棋聖戦Cリーグ出場・・・2人
    謝依旻六段 3-2 第44期残留
    上野愛咲美三段 1-3 第44期陥落

2020年

藤沢里菜四段 第15回広島アルミ杯・若鯉戦優勝
→ 公式戦の男女混合棋戦で優勝、史上初

  • ● 七大タイトル本戦出場・・・0人
  • ● 名人戦、本因坊戦の最終予選出場・・・0人
  • ● 棋聖戦Cリーグ出場・・・2人
    謝依旻六段 1-3 第45期陥落
    上野愛咲美三段 0-3 第45期陥落

2021年

藤沢里菜五段 第60期十段戦本戦ベスト8進出
→ 七大棋戦の本戦ベスト8進出、史上初

上野愛咲美四段 第16回広島アルミ杯・若鯉戦優勝

上野愛咲美四段 第46期新人王戦準優勝

奥田あや四段 第4回SGW杯中庸戦準優勝

  • ● 七大タイトル本戦出場・・・2人
    上野愛咲美四段 第47期天元戦、第60期十段戦 
    藤沢里菜五段 第60期十段戦
  • ● 名人戦、本因坊戦の最終予選出場・・・2人
    謝依旻七段 第47期名人戦最終予選決勝進出
    鈴木歩七段 第77期本因坊戦最終予選準決勝進出
  • ● 棋聖戦Cリーグ出場・・・3人
    藤沢里菜五段 3-2 第46期残留
    謝依旻七段 2-3 第46期陥落
    仲邑菫二段 0-3 第46期陥落

 記録を見ると、毎年、藤沢、上野によって新記録が生まれているのが分かる。さらに、昨年(2021年)は謝、鈴木、奥田、仲邑と活躍する人も舞台も増えている。藤沢、上野の2人が先頭に立って道を切り拓いていること、女流全体が力を付けていることがうかがえる。そして今年(2022年)はすでに牛栄子四段が第47期碁聖戦の本戦に出場(1回戦で敗退)、藤沢が第48期天元戦の本戦1回戦を突破した。

 2月14日発売の週刊碁では「なぜ女流棋士がここまで強くなったのか」について、小林泉美七段小山栄美六段星合志保三段の3人が掘り下げた「女流棋士進化論」が掲載される。
 女流棋士がここまで台頭してきた理由、それは社会の変化なのか、意識の変化なのか、はたまたAIの影響なのか...。世代の違う3人がそれぞれの視点で多角的に女流棋士を語り尽くした「女流棋士進化論」。興味のある方はぜひ手に取っていただきたい。

記・品田渓


第48期天元戦本戦1回戦で趙治勲名誉名人を破った藤沢里菜五段(2022年1月27日)