貫禄の連覇、井山裕太名人就位式【コラム:堀井大樹】


 第46期名人戦七番勝負を制した井山裕太名人(32)の就位式が12月10日に行われた。会場は東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」。式では、小林覚日本棋院理事長から允許状、朝日新聞社の中村史郎代表取締役社長から賞金3千万円の目録、協賛の株式会社明治からチョコレート効果1年分が贈られた。
 今期は最強の挑戦者・一力遼九段(24)を迎え、2勝3敗のカド番に追い詰められた井山名人。しかも名人戦では過去に第7局を3度戦い、3度負けているという不利なデータ付き。ギリギリの状況で完璧なパフォーマンスを見せ、世代交代に待ったをかけるその姿は、まさに異名たる「魔王」そのものだった。

【井山裕太名人謝辞】
 一力さんとはこれまでもタイトル戦を含め、色々なところで戦ってきています。ここ数年、とくに最近は成長著しく、現在もっとも大変な相手と思っていました。七番勝負ということで大変な戦いになることは覚悟して臨みましたが、蓋を開けてみると、一力さんの強さはもとより、名人に対する思い、というものをすごく感じました。
 名人戦においてフルセットで勝ったことがないというお話がありましたけれども、自分はフルセットまでいったとき、そこはあんまり意識していませんでした。ただ、第6局が終わったあとの朝日新聞さんの記事にそういったことが載っておりまして、そのときばかりはちょっと読まなければよかったなと思いました(笑)。もう頭に入ってしまったものは仕方がないので、結果を恐れず全力を尽くそうと、そういう気持ちで最終局に臨みました。
 今年は名人戦の前の本因坊戦、碁聖戦とフルセットが続いていまして、その苦しい戦いの経験が、この名人戦でも結果的には活かすことができたのかなと思っています。番勝負を通して反省点や課題が多く見つかりましたが、少ないチャンスをものにすることができたというところは一つ収穫だったかなと。
 今後も、七番勝負で得たものや課題、そういったものに自分なりに精いっぱい向き合い、少しでも総合的にレベルアップしていけたら。また来期の名人戦でも少しでもいいパフォーマンスができるようにこれからも精進したいと思います。

 通算8期目の名人獲得となり、名誉名人の称号獲得まで、あと2期。井山名人の充実ぶりを思えば時間の問題と思われるが、令和三羽烏を筆頭とするトップ陣も黙ってはいないはず。まずは早くも開幕している第47期リーグの行方を楽しみに待とう。

記・堀井大樹