師匠は数学の大天才~徐文燕初段が語る光永淳造六段「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段

 今回も読者の方から頂いた四字熟語をご紹介。何にも縛られずに自分が求めるものをのびのびと追求する様子を表す「孤笈飄然」(こきゅうひょうぜん)に選ばれたのは、棋士にして数学者の、光永淳造六段でした。光永六段は名門、灘中学校・高等学校から東京大学理学部数学科に進学した超エリート。灘高校在籍時に数学オリンピックで入賞するなど、早くからその数学の才能は知られていました。大学でも数学者として将来を嘱望されたそうですが、囲碁という魔性のボードゲームに出会ってしまい一転、周囲の引き止めを振り切って棋士を生涯の職業として選択したそうです。

 とても波乱万丈で面白そうな方です。ぜひ皆様にご紹介したい。そう思うのですが、私、編集Kは光永六段にインタビューするのに怖気付きました。ひょっとしたら、過去に高2模試で200点満点中20点しか取れなかったせいかもしれません・・・。あらゆることの前に「約」を置き、極力数字から背を向けて生きているので、光永六段の前に立って数学的に見透かされることを恐れたのです・・・。ということで、本コラムでは光永六段の代わりに光永六段の愛弟子、徐文燕初段にインタビューをしました。光永先生、どうか数学恐怖症を克服できた暁にはお話をお聞かせください。何卒よろしくお願いいたします。




(徐=徐文燕初段)

――今回は師匠の光永六段についてお話いただけるということで、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

徐)こちらこそ、よろしくお願いいたします。

――はじめに、文燕さんが弟子になられた経緯を教えてください。

徐)お母さんの勧めで小学4年生の頃から先生の教室に通っていて、院生に入った時に弟子になりました。

――光永六段はどんな先生ですか?

徐)優しいし、説明がとてもわかりやすいです。あと、私の碁を序盤だけ見ただけでその時の調子とか、全部分かられちゃうのがすごいです。

――分かられてしまうというのは?

徐)「何かあったの?」とか、囲碁じゃないこともですし、囲碁の意味でも序盤を見ただけでその碁が勝ったか負けたかすぐに分かっちゃうみたいで。

――すごいですね。

徐)はい(笑)。

――光永六段は東大理学部数学科のご出身ですが、教わる中で「ならでは」なことはありましたか?

徐)ヨセの説明がすごく上手で、とてもわかりやすいです。でも、100分の何とか、そこまで深くなると私はついて行けないのですが(笑)。たまにヨセコウが絡んだりして難しい計算になる時があって、先生に「よし、じゃあちゃんと計算してみようか」って言われることがあります。そういう時はだいたい「あ、いいです」ってお断りしています(笑)。

――光永六段も断られることを分かって聞いてみた、みたいな感じですか(笑)?

徐)そうですね(笑)。そういう冗談はよくあります。あと、中学生の時は学校で出た数学の宿題も教えてもらっていました。

――それは、「ならでは」ですね!いかがでしたか?

徐)すごくわかりやすくて、すぐにパパって解けました。

――文燕さんは数学がお好きなんですね。

徐)はい。好きですね。

――光永六段と文燕さんで「燕joy光永ヨセ祭り」というユーチューブチャンネルをやってらっしゃいますよね。

徐)先生は地方とかで近くに碁の勉強をする環境がない子どもたちとかがヨセの勉強をしたい時に見て勉強できるようにと考えているそうです。

――素敵ですね。あ、あと光永六段はツイッターで「ムーミン谷の住民(純粋数学の世界の人)がヨセを考えたら」というテーマでつぶやかれていますよね。

徐)はい。ユーチューブは一応一般向けなんですけど、あれはマニア中のマニア向けだそうです(笑)。

――文燕さんは理解できましたか?

徐)読んだ時はわかったような気がしたんですけど、多分理解できてないです(笑)。

――そうなんですね(笑)。最後に、光永六段の素敵だと思うところを教えてください。

徐)先生は優しいですけど、厳しいところもあって、囲碁だけじゃなくて、挨拶とか、言葉遣いとか、そういうのも間違っていたら直してくれます。そういうきちんとしたところが素敵なところです。

――なんだか、棋譜を見て文燕さんのコンディションが分かったり、数学の宿題を見てくれたり、礼儀作法や言葉遣いの指導もしてくれたり、学校の先生みたいですね。

徐)そう言われれば、確かにそういうところはあるかもしれませんね。

――ありがとうございました。

記・編集K