心に残る井山裕太三冠の一手~創意工夫の真骨頂「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段

 ウニこと鈴木伸二七段を招いての「ウニつるりん」最終回はウニが尊敬してやまない井山裕太三冠を改めて取り上げました。
 ウニに限らず井山三冠は棋士にとって特別な存在です。七冠制覇を2度達成し、本因坊戦で前人未到の11連覇を成し遂げているのですから、それはもう当然特別なのですが、それだけではないのです。ウニは言います。「井山先生の碁は本当にかっこいい。魅せてくる。独自の発想で魅せることと結果を出すことを同時にやっているところが一番すごい」。




 痺れるほどかっこいい井山三冠の井山三冠にしか打てない手。百聞は一見に如かずです。いくら言葉を尽くして説明しても、実際に見る衝撃には敵わないでしょう。ということで、今回はウニ、つる、りんが感動した井山三冠の一手をそれぞれの感想とともにご紹介いたします!

【 ウニの心に残る井山三冠の一手~その1 】
 第39期天元戦挑戦手合第3局 (2013年11月28日)
 黒:秋山次郎九段 白:井山裕太天元


  • ウニ「この碁は僕が記録係をした天元戦挑戦手合の一局です。先生と言えばツケ。ド派手なツケが印象的ですが、白1とこんなところにツケる手まで考えているのかと驚きました。一見意味がわからないように見えるこの手がのちのち効いてきます。この細部に至るまで行き届いている感じが、ツケの種類としてはやや地味ではありますが、これぞ井山先生という感じがして僕は好きです」

【 ウニの心に残る井山三冠の一手~その2 】
 第34期名人戦挑戦手合第2局(2009年9月16、17日)
 黒:井山裕太八段 白:張栩名人


  • ウニ「堅そうに見える白に対して黒1から碁を動かしていきました。この後、圧倒的に黒が弱そうに見えるのに逆に白を攻めてしまうくらいの迫力をみせて、局面をリードしていきます。この碁は井山先生が初めて名人を取ったシリーズの第2局。前年の悔しい負けを乗り越え、このシリーズでも第1局を落とすという苦しいスタートでしたが、本局で勝利し、そのまま4連勝で名人を奪取しました。一連の流れと結果も含めて井山先生のかっこよさがよく表れた一手だと思います」

【 つるの心に残る井山三冠の一手 】
 第37期名人リーグ(2012年7月5日)
 黒:井山裕太天元 白:結城聡九段


  • つる「黒△二子をどう助けるかという場面で井山さんは黒1とツケました。ツケは井山さんの十八番。この一手でキレイにサバけていて感動しました。こういう一見して気付きにくい、でも打たれてみればこれしかないと思えるような手筋を繰り出すところが井山さんのかっこいいところです」

【りんの心に残る井山三冠の一手】
 第33期名人戦挑戦手合第5局(2008年10月15、16日)
 黒:張栩名人 白:井山裕太八段


  • りん「白1とシチョウで取られるところを逃げ出したこの手は衝撃でした。普通に考えたら取られるシチョウを逃げるのは大悪手。しかしこの場合は右辺黒の死活をにらむ絶好の手筋になっているのです。打ちぶりからこの手はその場で思いついたものではなく、前からの構想だったとわかります。井山さんはこの時19歳。10代にしてこんなに柔軟な発想ができるのかと驚愕しました」

記・編集K