囲碁はおもしろい。だから、たくさんの人に囲碁を知って欲しいし、楽しんでもらいたい。未来の囲碁仲間は自分たちでつくるんだ!!そんな思いを共有する若手棋士ら5人が集まって、囲碁普及団体、KAKETSUGI JAPAN(カケツギジャパン)を立ち上げた。目を引くのはその若さだ。平均年齢は22歳で、全員で相談しながら方向性を決めて行く。囲碁を取り巻く環境が厳しい中で、「待っていては何も変わらない」と自ら行動し始めた彼らが目指すこととは。KAKETSUGI JAPANの取り組みとメンバーを取材報告する。

記者がKAKETSUGI JAPANを知ったのは、とあるイベントで河原裕二段に「若手の仲間と普及活動しているので、今度取材してください」と声をかけられたからだった。聞けば月に一度、六本木のマルシェで囲碁ブースを出展しているのだと言う。熱意に押されて2月、現場に取材へ行った。


風は冷たいが晴天。ハンドメイドや地域の特産品などの店舗に混ざって、9路番が並ぶ囲碁ブースがあった。記者が行った時には海外ルーツと思しき親子が入門を受けていた。囲碁体験は大人が1000円で子どもは500円。子ども連れの家族が足を止めることが多く、中には習い事の帰りなのか、柔道着を着た少年たちの姿もあった。
人の流れが落ち着いたところで、メンバーの話を聞いた。メンバーは河原二段(20)、武井太心三段(24)、フィトラ・R・S二段(23)、荒井幹太初段(17)、齋藤藍杜さん(26)。団体の発起人である齋藤さんは元院生で現在は会社員をしながら土日に活動をしている。「プロにはなれなかったけれど、囲碁に関わることをしたいという気持ちがずっとあった」と言う。「仲が良かった武井くんとフィトラくん、河原くんに『一緒に普及活動をしよう』と誘って始めることになりました」
呉服屋で働いた経験のある齋藤さん、団体名のカケツギには「きっかけを作ってつぎの世代に囲碁をつなぐ」という意味と、着物などに空いた穴を修復する伝統技法のカケツギ、断点を守る囲碁のカケツギの3つの意味を込めた。目指すは兎にも角にも新規開拓だ。「囲碁を知るきっかけがなければ囲碁にハマりようがありません。今の私たちの目標は自分たちがきっかけで囲碁を始めてくれる人が1000人になることです」

河原二段にも話を聞いた。普及活動はほとんどの場合がボランティアだ。それだけに囲碁で生計を立てる棋士が普及活動を行うのはハードルが高いと考える向きもある。特に若手は強くなることだけを考えるべきと思う人もいるだろう。けれど河原二段は「現状を考えたらそんなことは言っていられない」と言う。「囲碁人口が減っているとか、スポンサーさんが減っているとか、言っていても何も変わりません。不満を言うくらいなら、少しでもいいから自分たちにできることをしたいと思っています」。活動費は自分たちで出し合って工面している。いずれは収益化したいと考えているが、「僕たちの活動はあくまでも新たに囲碁を始める人を増やすのが目的」とそこを譲る気持ちはない。囲碁を知らない人に囲碁をアピールするのは難しいことだが、月に一度のマルシェを皮切りに、積極的に機会を見つけて囲碁入門をしたいと考えている。

KAKETSUGI JAPANが結成されたのは昨年の夏。月に一度のマルシェが定着したのも最近で手探りが続くが、手応えも感じている。「さっききてくれた子はこのマルシェの常連さんです。一度やってみたら楽しかったみたいで、マルシェの日は必ず来てくれます」と齋藤さん。他にも「農心杯のツイッターを見て囲碁を覚えようと決意したマンガ『ヒカルの碁』のファン」など、きっかけさえあれば囲碁をやりたいと思う人はいると感じられる瞬間は嬉しい。マルシェで囲碁を覚えた中から「継続してやりたい」と言う人も出てきた。これを受けて近々教室もはじめる予定だ。「昨年、虎丸CUPでも囲碁入門をさせてもらいました。僕たちもきっかけを探しているので、イベントなどに声をかけていただけたら嬉しいです(河原二段)」。若手たちの挑戦は始まったばかりだ。
KAKETSUGI JAPANメンバー

