「世界一」になるとは、かくも難しいことなのか。1月12日から15日にかけて行われた一力遼五冠と韓国の申旻埈九段による第30回LG杯朝鮮日報棋王戦は申九段の2勝1敗で一力五冠の準優勝という結果に終わりました。2024年に応氏杯優勝を成し遂げた一力五冠は二度目の世界戦優勝をかけて挑みましたが、惜しくも届きませんでした。
「一度世界戦を優勝したことがある人は結構いる。2回、3回と優勝を積み上げることができてこそ本当に世界のトップになったと言える」。LG杯に挑む前、一力五冠がインタビューで語った言葉が今になって重たく感じます。けれど、こうも思います。これは終わりではなく始まりなんだと。今回、SNS上の大きな応援の契機となったマンガ『ヒカルの碁』のワンシーンには「遠い過去と遠い未来をつなげるために」という一節が書かれていました。日本が世界戦で長く低迷していた時代から日本の棋士が世界戦優勝をかけて戦う未来につなげた一力五冠。その一力五冠自身は井山裕太碁聖に何度もタイトルを阻まれ涙した過去、アジアカップで世界の壁を感じ涙した過去を応氏杯優勝につなげた。今回の敗戦もまた、未来から見た過去です。いつか必ず、この時があったから今があると振り返る日が来るでしょう。
ということで、来るべき未来のためにもつる(鶴山淳志八段)&りん(林漢傑八段)と共に今回の戦いを振り返っていきたいと思います!
つる = 鶴山淳志八段
りん = 林漢傑八段
- りん 悔しいよ。第1局を大逆転で勝った時には「これはいける!」と思ったんだけどな。相手の申旻埈九段、全体を通して安定感が素晴らしかったし、すごく強かった。
- つる 申九段は世界戦優勝経験が2回あって、もちろん世界のトップ棋士なんだけど、一力さん、今まで負けたことがなかったんだよね。だから正直なところ一力さんが優勝すると思ってた。でも、やっぱり手強かったね。気合いがすごかったし、準備もすごい。僕は実力で一力さんが負けているとは今でも思わないけど、やっぱり対策という意味で相手が上回ったのかな。
- りん 一力さんも当然綿密に対策を立ててたと思うけど、韓国はチーム全体で研究してくるからね。それに、一度「世界一」になるとマークされるし、研究もされる。一力さんのステージが1つ上がったからこその障壁もあったと思うな。
- つる それこそが世界のトップ棋士として認知されるっていうことなのかもね。
- りん ただ、これで終わりじゃない。
- つる それは本当にその通り。やっぱり一力さんの戦いぶりって感動するし、今回、応援がかなり盛り上がってたよね。それはめちゃくちゃ嬉しかった。
- りん 苦しい碁を一生懸命打開しようとする姿。それって結果がどうであっても感動するし、かっこいい。SNSの盛り上がりからも、一力さんの凄さ、素晴らしさは世の中に届いてるんだって実感できた。本当にね、一力さんは国宝だと思うよ。
- つる りん、良いこと言うね。一力さんは国宝です。
- りん 近い将来必ずまたやってくれるよ。有言実行の人だもの。
- つる そうだよね。今はとにかく「お疲れ様、感動をありがとう」とお伝えしたい。22日からは虎ちゃん(芝野虎丸十段)との棋聖戦が始まるし、息つく暇もないと思うけど、少しでもゆっくりしてもらいたい。
- りん そうだね、開幕局の会場はハワイだね〜。
- つる あれ?なんかウキウキしてない?
- りん バレちゃったか(笑)。実は私、ユーチューブ解説として帯同するんだよね。
- つる えっ!
- りん ごめんね、アプリでコツコツ英語を勉強しているつるさんを差し置いて。ワイキキビーチでアサイーボウルとロコモコを食べてくるね。
- つる おいっ、一力さんと虎ちゃんが命を削って戦っている時に観光しようとしているな!許せない!!罰として、海水浴禁止ね。その代わりに一力さんと虎ちゃんの写真をたくさん撮ってきてよ。
- りん おっけ〜
- つる 緊張感が足りないな。
- りん 大丈夫、任せておいてよ!LG杯のユーチューブ解説ではタイとか、台湾とか、シンガポールとか、国外のファンの方からもたくさん応援していただいたんだよ。棋聖戦でもハワイからリングリッシュで世界中のファンに向けて一力さんと虎ちゃんの素晴らしさをアピールしてきます!!
記・品田渓

