若い才能が駆け上がっていく様はいつ見ても眩しいものです。
7月1日、第81期本因坊戦第5局で20歳の挑戦者、福岡航太朗七段は一力遼本因坊を相手に堂々の勝利をおさめ、新本因坊となりました。しかも55年変わらなかった二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)の最年少本因坊獲得記録を塗り替えて。
「強い強いとは思っていたけど、やっぱり強かった」「さすがの一言。今からこの次が楽しみ」とつる(鶴山淳志八段)&りん(林漢傑八段)も大興奮。今回はフルセットまでもつれ込んだ歴史に残る名シリーズを振り返りつつ、最年少記録の数々をつる&りんの思い出と共に確認していきます。
つる = 鶴山淳志八段
りん = 林漢傑八段
- りん いやー、まさか、本当に獲ってしまうとは。びっくりした。
- つる おや、りんは福岡くんが勝つとは思ってなかったの?
- りん あり得るとは思ってたって。でも、相手は一番タイトルを持っていて、世界一にもなった一力さんだよ?普通は少し厳しいかなと思うじゃん。
- つる まあ、そうだよね。正直、今回の一力さんは本調子ではなかったと思う。でも、それ以上に福岡くんのパフォーマンスが素晴らしかった。やっぱり、「若さ」だろうな。打ってる間にどんどん強くなっていったと思う。
- りん 私、第4局の時、大盤解説で現地にいたのよ。あの碁はめちゃくちゃすごかった。一力さんに悪手があるわけでもないのに、ジワジワ差を広げていって勝ち切る。勝ち方に貫禄があるというか、2連敗して後がない時にそれができるってすごい。
- つる 全体を通してずっと落ち着いてたよね。僕も第1局の時、大盤解説で現地に行ったけど、普段どおりというか、初めてのタイトル戦とは思えなかった。それで盤上でもしっかり実力を出し切って先勝。度胸があるよね。
- りん 第4局の前夜祭の時なんか、ベテラン級のトークだったよ。来賓の方の「名勝負を期待してます」って挨拶に応える形で「今回は林漢傑八段と木部夏生三段がいらっしゃいます。名勝負には名解説ということで、明日は期待してください」って言ったの。初めてのタイトル戦で解説者に話を振るとか、余裕がなきゃ絶対にできない。
- つる りんは何て返したの?
- りん なんかもう慌てちゃって何も覚えてない。
- つる ダメじゃん(笑)。大盤解説者で登壇するの何回目よ。
- りん ・・・悔しいです!でも、凡人なんてそんなものよ。だから福岡くんがすごいんじゃない。
- つる これからが本当に楽しみだよね。福岡くん自身も言ってたけど、これで終わりじゃない。さらにタイトルを積み重ねられてはじめて本当のトップ棋士だからね。ところで、今回福岡くんが石田先生の最年少本因坊獲得記録を塗り替えたじゃない。これを機にちょっと最年少記録を振り返りたいんだけど、りんの記憶に残ってる最年少記録って何?
- りん うーん、やっぱり一番衝撃的だったのは虎ちゃん(芝野虎丸棋聖)の最年少七大タイトル獲得記録だよね。名人っていう超ビッグタイトルを19歳で獲得って...。もうすご過ぎて意味がわからんってなった。それに、その時の相手が張栩(九段)さんだったんだけど、張栩さんも昔、最年少記録を作りまくってたんだよ。そばで見てて、すごいなと思ってきたからこそ、虎ちゃんの出現は衝撃的だった。
- つる 肌身ですごいって知ってる人の記録が塗り替えられていった時の衝撃ってやっぱり大きいよね。僕の記憶に残る年少記録は2つあって、1つは菫ちゃん(仲邑菫六段)の日本棋院の最年少入段記録(10歳)、もう1つは井山さん(井山裕太碁聖)が16歳の時に阿含・桐山杯で優勝して打ち立てた最年少棋戦優勝記録かな。菫ちゃんは単純に入段した時があまりにも小さくて可愛くて、「この子が!!」っていう衝撃。しかも実際にその後すぐに大活躍して、やっぱりものすごい大器だったんだなっていう驚きも含めて記憶に残っている。井山さんに関しては、後の活躍を見れば納得しかないけど、それでも16歳が全棋士参加の一般棋戦で優勝って、とんでもない人が出たんだなって思ったよ。
- りん こうして見ると今一線で活躍してる人ってやっぱり若い頃からすごい。一力さんも実は最年少リーグ入り記録(16歳時、1リーグ6人、2リーグ制だった頃の棋聖リーグ)保持者だし、最年少タイトル挑戦は山ほどしてる。記録を塗り替えるようなすごい人ってそう簡単には出て来ないから、そういう意味でも虎ちゃん、一力さん、井山さんは歴史的に見ても最強の3人だよね。
- つる その最強に福岡くんたち若手は挑戦していくんですな。
- りん そういうこと。これから福岡くんを筆頭に若手の活躍がますます楽しみだね!
記・品田渓

