あんなことやこんなこと、振り返れば今年もいろいろなことがありました。つる(鶴山淳志八段)&りん(林漢傑八段)も年の瀬にしみじみとしているようです。皆さんはどんなことが心に残っているでしょうか。今年の囲碁ニュースをつる&りんと一緒に振り返っていきましょう。
(写真提供:日本棋院)
つる = 鶴山淳志八段
りん = 林漢傑八段
- つる 1年ってどうしてこんなにあっという間なんだろう。ひょっとして、何月か飛ばしてない?
- りん 分かる。つるさん、分かるよ。でもね、それ、気のせいです。だって思い出してくださいよ、今年の囲碁ニュースを。
- つる そうだね。振り返るとすごく色んなことがあった。これが本当に全部1年で起きたの?って思うくらい。
- りん 観る碁委員会としては来年、気持ち良くウォッチするためにも、今年あったことはきちんと今年のうちに振り返っておきたいよね。
- つる 賛成です。あと、年末恒例「つるりん大賞」も決めないとね。
- りん あの垂涎の的と言われる「つるりん大賞」か。今年も荒れそうだなぁ(笑)。
- つる どうやって振り返ろう。今年心に残ったできごとベスト5を交互に挙げてく?
- りん 5つに絞るのも、順位つけるのも難しいな。もし、被っちゃったらどうするの?
- つる まあ、その辺はうまくかわしていただいて(笑)。あくまでも振り返りがメインで順位はおまけというか、なくてもいいようなものだから。
- りん 分かりました。やって行きましょう!私から言っていい?
- つる 言っちゃってください。
- りん まずはこれでしょう。一力遼棋聖史上3人目の五冠達成!!!
- つる 今年の囲碁界は一力さんを中心に回ってたよね。
- りん 昨年の応氏杯優勝からさらにパワーアップしている気がする。心・技・体すべてが充実していて、眩しい。
- つる 本当に強い。無敵っていうのかな、オーラからして違う。井山さんが七冠だった頃と空気が似てて、ひょっとしたらひょっとするかもしれないって本気で思う。
- りん 世界戦での活躍も素晴らしかったよね。世界一になってすぐ翌年に世界戦の決勝に進出するって、本物の世界トップ棋士にしかできないことだよ。
- つる LG杯だね。決勝三番勝負は年明けすぐ。二度目の世界一なるか。信じられないくらいすごいことなんだけど、一力さんならやってくれるんじゃないかな。
- りん 次はつるさんだね。
- つる はいはい。私はこれです。上野梨紗女流棋聖SENKO CUP優勝!!!
- りん やっぱり世界一ってすごいよ。しかも決勝であの最強と言われる崔精九段を破っているんだもの。昨年あたりから上野愛咲美女流名人と藤沢里菜女流本因坊の2強体制に梨紗ちゃんが加わって3強っぽくはなっていたけど、今年ではっきり並んだ感じがあるよね。
- つる 愛咲美ちゃんと里菜ちゃんはすごく強いからね。梨紗ちゃんがそこに並んだっていうのは頼もしいというか、未来は明るいなって感じがする。
- りん では、ワタクシ2投目行かせていただきます。一力さんの強さが際立ったとはいえ、このお二人ほど一力さんを苦しめた方たちはいません。芝野虎丸十段の復活と井山裕太碁聖の意地。感動しました!!
- つる 昨年無冠に転落していた虎ちゃんが4月に十段を奪取。パワーアップして復活したよね。正直、今の一力さんが強すぎるから虎ちゃんは一冠だけど、普通なら2、3個はタイトルを持っている強さだと思うな。
- りん 本因坊戦はフルセットだったし、名人戦も2勝入れている。どの碁も内容が素晴らしくて、一力さん相手に完勝している碁もあった。
- つる 井山さんもだよね。年明けすぐの棋聖戦は一力さんかなり危なかったと思うんだよ。フルセットまでもつれ込む大接戦。一つ違えば井山さんが棋聖に復冠していてもまったくおかしくなかった。
- りん 井山さん、棋聖戦が終わったあと、調子を崩して成績がふるわなかったじゃない。それでも碁聖戦を防衛したのには感動したよね。
- つる そうそう。この時の虎ちゃんは絶好調で、正直始まる前は井山さんが苦しいと思ってた。でも、フルセットまで粘ってしっかり踏みとどまる。二度の七冠を達成している勝負勘は伊達じゃないと痛感した。
- りん 五冠を達成した一力さんが次に目指す先は七冠。それを阻止できるとしたら現状では井山さんと虎ちゃん以外にはいないと思う。
- つる では私も次、行かせていただきます。今年の七大タイトルの役者はほぼ、一力、井山、芝野の3人だった。けれど、そんな中、たった1人そこに割り込んだ方がいます。
- りん はいはいはい。渋さピカイチのあのお方、志田達哉八段ですね!
- つる 昨年、中庸戦優勝の副賞として人生初の大盤解説をしてから彼の中で何かが変わったんじゃないかな。天元戦の挑戦者決定戦で虎ちゃんを破って初のタイトル挑戦。そして中部のタイトル、王冠を9連覇中だった伊田篤史九段から初挑戦で奪いました。
- りん 強烈なインパクトだったよね。こんなに志田くんの肉声が聞けた年は今までなかったんじゃないかな。天元戦は残念ながらストレートで敗退となってしまったけれど、第1局はものすごく志田くんらしい碁で素晴らしかった。
- つる ひょっとしたら、人前に出る快感に気づいてしまったのかもしれないね(笑)。
- りん それはあるかも。そして、やっぱり中庸戦には何かがあるということで、私が次にあげたいのは鈴木伸二八段、中庸戦優勝です!!
- つる いやいや、確かに素晴らしかったけれども、ウニくんがその位置に入ってくるの?今年のニュースベスト5の3つ目に?
- りん 入るでしょ。だって、私が予想を的中させたんだから(つる&りんは毎年中庸戦で誰が優勝するかを事前予想しており、今年はりんが珍しく当てました)。
- つる そういうことか(笑)。
- りん それだけじゃないよ。ウニくんは第1回女子囲碁リーグの囲碁・将棋チャンネルチーム監督としてチームを優勝に導いてもいるんだよ。ダブル優勝でしかも一つは縁の下の力持ち的な優勝。これぞ中庸の鑑。
- つる まあ、そうだね。それじゃあ私も行きます。なんだかんだニュースターの登場ほど熱いものはないっ!!ということで、名人リーグ!!!
- りん ん?人物じゃなくて?名人リーグ?
- つる いやー、ひとつに絞れなくて。今年の名人リーグは若手躍進のメイン舞台だったんだよ。まずは第50期、福岡航太朗七段が挑戦まであと一歩のところまで迫った。
- りん 惜しかったよね。井山さんと虎ちゃんに敗れて今回は逃しちゃったけど、着実に力をつけてる。タイトル戦の表舞台に来年か、少なくともあと数年のうちには出てくると思うよね。
- つる もう1人、こっちは第51期です。史上最年少17歳2ヶ月のリーガーが誕生しました、桑原樹七段!!
- りん 二段から七段は史上初らしいね。去年から強いなとは思ってたけど、まさかこんなに早く上がってくるとは。
- つる 名人リーグは本当のトップ棋士しかいないから、ここで揉まれてさらに強くなること間違いなし。大変な戦いだろうけど、頑張ってほしいね。
- りん 残すは2つか。私の4つ目は悩むけどこれかな。藤沢里菜女流本因坊に星合志保四段挑む!!
- つる 分かる。ドラマがあったよね。
- りん ホッシーは4年前にも里菜ちゃんに挑戦していて、その時はストレート負けだった。そして今回、敗れたとは言っても2勝3敗のフルセット。特に今年はかなり気合を入れて囲碁の勉強に集中しているのを知っていたから熱かったね。
- つる 僕の4つ目はこれかな。大西竜平七段、大復活!!!
- りん それね、ちょっと竜平くん強すぎない?広島アルミ杯若鯉戦優勝もだけど、今年の成績43勝7敗(12月15日時点)って・・・。
- つる 勝率8割6分か・・・。異次元だな。
- りん 1年くらい休場してて、昨年末に復帰したんだよね。もともと実力者だから、復帰して勝つのはまあ分かるんだけど、それにしてもすごい。
- つる まず、若鯉戦の勝ち上がりが凄まじいからね。酒井佑規六段、福岡航太朗七段、三浦太郎四段、横塚力七段。これは若手の最強クラスを全員集めたようなもの。
- りん 強すぎるのがちょっと困るけど、竜平くんの復活は嬉しいね。このまま来年も活躍していってほしい。
- つる いよいよラストか。りん、言っちゃってください。
- りん 今年のニュースベスト5、ラストを飾るのは・・・つる、海外進出!!!ですっ(笑)。
- つる はい?
- りん いやー、つるりんでやってますけど、なんか最近つるさんがやたらとグローバルで、ロサンゼルスとかサンパウロとか、あんまり日本にいないんですよね。ちょっとどうなんですか?私はさみしいよ。
- つる じゃあ私も。ラストはこれです。りん、蘇耀国九段に前例のないコウの高等テクニックで競り勝つ!!
- りん おいっ(笑)!!それってあれでしょ。めちゃくちゃ大きいコウ争いの最中に私がうっかり全然関係のない半コウを抜いて、そうしたら蘇さんがコウダテしてその半コウを抜いてくれて、結果私が1コウ得して勝ったっていう・・・。
- つる そう、面白かった。
- りん どうせ私の話題を出してくれるなら、碁聖戦でベスト4まで行ったこととかを褒めてくれればいいのに(笑)。
- つる それも、すごいよね。世のおじさんに元気を与えたと思うよ。でも、僕は蘇さんとのドタバタコウ争いの方が面白かった。
- りん なんかお互い最後の1つは他にあったような気もするけど、ひとまず振り返りましたね。それじゃあ、つるりん大賞を決めて行きますか!
記・品田渓

