日本棋院ジュニアスクール、大幅リニューアルへ 経営改革報告(第7回)

 日本棋院は2026年1月より、黒嘉嘉囲碁(HJJ GO)を導入し、幼稚園児から小学生まで幅広い子どもたちが学ぶジュニアスクールを大幅にリニューアルします。本稿では、その取り組みをご紹介します。


HJJ GOの魅力

 日本棋院にとって大きな課題のひとつは「囲碁の普及」です。世界では囲碁ファンが6,500万人に増加している一方、日本では2006年の204.6万人から2021年には104.6万人へと半減しました。しかし、世界的なトレンドを踏まえれば、的確な普及活動によって人気が再び高まる可能性があります。
 経営改革委員会の報告では、「囲碁であそぼ!」のような入門アプリに加え、本格的に学びたい層向けのアプリの充実が必要と提言されています。そこで注目したのが、台湾で開発され2021年10月にリリースされた HJJ GO です。既に有料会員は2.5万人を超え、2024年5月からは実店舗での囲碁教室も展開。現在は35教室で約8,000人が学んでいます。こうした人気と勢いを日本でも活かし、「囲碁を通して人間力を育む」という理念に共感して導入が決まりました。


HJJ GOで子どもたちの人間力が育まれる理由

 ジュニアスクール講師の王唯任五段は、囲碁を学ぶことが子どもたちの人生に大きなプラスになると語ります。具体的には、

  • (1) 自信を持つことにつながる
  • (2) 自ら学ぶ力が身につく
  • (3) 困難を乗り越える力が育つ

という3つの効用です。HJJ GOを活用することで、これらが次のようにより効果的に実現できます。

  • 棋力向上を客観的な指標で示せるため、学びのモチベーションが高まる
  • 家でも学習できるため、上達が早まる(学習効率が約30%向上とのデータあり)
  • AIの支援や的確なアドバイスにより、課題を乗り越える経験を積み、自然と困難克服力が育つ

さらに、指導者のスキル差による影響が少なく、昇級・昇段の基準が統一されている点も大きな利点です。AIを活用した学びの進化は世界の教育界で広がる潮流であり、それを囲碁に応用したのがHJJ GOなのです。


ジュニアスクールがめざす姿

 囲碁に親しむ子どもを増やすためには、囲碁が「能力を伸ばす教育的な力を持つ」という事実を保護者に理解してもらうことが欠かせません。台湾では、囲碁が「考える力を育み、人間力を高める」教育的価値を持つと広く認識され、それが人気につながっています。王五段は「日本ではこの面が十分に理解されていない。ジュニアスクールでその実現をめざしたい」と力強く語っています。
 HJJ GOでは、子どもたちや保護者とのコミュニケーションを重視し、質の高い指導を可能にしています。従来の「勘」や「経験」に頼った指導から、AIを活用したデータに基づく体系的な学びへ。HJJ GOの普及によって囲碁の学び方が変わり、囲碁に親しむ子どもたちがさらに増えることを期待しています。




日本棋院 理事(元経営改革委員会 副委員長) 稲田 修一

稲田 修一(技術経営士 情報未来創研代表)
総務省で、モバイル、セキュリティ、情報流通などの政策立案や技術開発業務に従事。東京大学特任教授として、IoT/データ活用によるビジネス革新や価値創造について研究。一般社団法人情報通信技術委員会で、標準化推進業務に従事。早稲田大学教授として、研究マネジメント業務に従事。現在、コンサルティング活動の他、東京観光財団「東京都次世代型MICE推進会議」委員、スマートIoT推進フォーラム「IoT価値創造推進チーム」リーダー、日本棋院理事などとしても活動。