来る!第9回SGW杯中庸戦―中年の中年による中年のための大舞台

 中年、それは現実と向き合うシビアな年代です。人によっては子育てしたり、老いていく親と向き合ったり、そうでなくても、年々体調のいい日が少なくなっていく中で、日々の生活を成り立たせつつ、決して待ってはくれない将来に考えを巡らせたり・・・。
 プロ囲碁界の中年棋士も世の中年の皆様と変わるところはありません。夢のある若者とロマンのあるベテランに挟まれて、生活を糧に必死で戦っています。普段は縁の下の力持ち的なポジションでスポットライトを浴びる機会が少ないけれど、確かな実力と豊かな経験を持つ、いぶし銀な中年中堅棋士たち。そんな彼らが年に一度、世界の中心で囲碁への愛を叫ぶ大舞台、それがSGW杯中庸戦です!!
 中年中堅棋士ど真ん中のつる(鶴山淳志八段)&りん(林漢傑八段)は中庸戦優勝者(りん=第1回、つる=第5回)であり、長年のウォッチャーでもあります。今回の「つるりん式観る碁のすすめ」は10月30日、11月1日の本戦を前に、恒例となった中庸戦徹底ガイド&優勝予想。日本一味わい深い、通な棋戦の見どころをたっぷりと紹介します。


昨年は鈴木伸二八段が優勝。今年の中庸は誰になるのか。

つる = 鶴山淳志八段
りん = 林漢傑八段
しな = 品田渓(ライター)

  • つる お鍋が美味しい季節になってきました。ということは?
  • りん 来た来た!中庸戦の季節到来ですね!!私、毎年思うんだけど、お鍋の具ってお手頃価格でいつも台所にいてくれる食材、つまりちょっと地味な食材が多いじゃない。でも、美味しくて栄養満点。それを全部お鍋で炊くともう絶品。中庸戦って棋士のお鍋なんじゃないの?
  • つる 味が染みてるのは間違いない(笑)。今回のメンバーも素晴らしいよ。青木紳一九段、三村智保九段、河野光樹九段、溝上知親九段、張豊猷九段、井口豊秀八段、林子淵八段、松本武久八段、望月研一八段、安斎伸彰八段、横塚力八段、安達利昌七段、伊藤優詩六段、稲葉貴宇五段、田中伸幸五段、大谷直輝五段、以上の16名です!
  • りん 染みてるね~。
  • しな 横からすみません。毎年恒例でご存じの方も多いかもしれませんが、SGW杯中庸戦がどんな棋戦なのか、改めて教えていただけますか。
  • つる 確かに、今年はじめてご覧になる方もいるかもしれないので、イチからご説明しましょう。まず、この棋戦の一番の特徴は中年(31歳以上60歳以下)で中堅(七大棋戦、竜星戦、阿含桐山杯の優勝経験なし)しか出られないところです。そして、一度優勝すると卒業。つまり、毎年新しい中庸が誕生します。
  • りん リーグ戦というのも魅力の1つだと思うな。1日2局、2日で4局打つんだけど、初戦で負けても入賞を狙えるから全員が最終局まで全力。NHK方式(一手30秒、1分の考慮時間10回)の早碁だからテンポがいいし、当たり具合とか、勢いとか、色々な要素が絡み合うから誰が優勝するか予想がつかない。
  • しな だから、毎年お2人は優勝予想をしているわけですね。
  • つる その通り!中庸戦ほど予想のしがいがある棋戦はなかなかないんです。もしも一般棋戦で芝野虎丸棋聖、一力遼名人がいたらどうしますか?みんな2人に予想しちゃうでしょ?でも、それじゃあ予想としてはつまらない。でも、中庸戦は本当に全員に優勝の可能性があるから予想がばらけて面白い。
  • りん まあ、私ほどになるとそれでも当ててしまうわけですけど。
  • つる・しな ・・・・・
  • しな ありがとうございます。よく分かりました。ちなみに、前回大会で一応、りん先生の呪いが解けたと認定されたので、今回は第8代中庸鈴木伸二八段を交えて予想談義をしていただいたあと、鈴木八段に予想を封じていただくことになりました。(注・りんは第4回から第6回と3回連続で予想を大外ししたため、りんが予想すると勝てない呪いを発動しているのではないかと疑われ、第7回、第8回は二日制タイトル戦の封じ手のように予想を封じていました。しかし第7回、第8回とそこそこ当てたため、今回から封じなくてもいいことになりました)
  • つる それは楽しみですね。ウニくん(鈴木八段)はセンスがいいから当ててきそうだな。封じた予想は当日の大盤解説会で開封するんですよね。
  • しな はい。聞き手の吉原由香里六段が開封して読み上げてくださる予定です。
  • りん ウニくんもプレッシャーだね。全然予想と違う人が優勝決定戦を打ってたらどうなるんだろう。
  • つる 笑いが起きるんじゃない(笑)。
  • りん いいね(笑)。
  • しな 鈴木八段がいらっしゃるのはもう少し先なので、その前に今回のメンバーをご紹介いただければと思います。
  • つる 正直、語ろうと思うといくらでも語れてしまうのですが、きりがなくなってしまうので、ここは中庸メンバーを3つのカテゴリーに分けて紹介したいと思います。
  • しな 3つのカテゴリーですか。
  • つる そうです。つまり、ベテラン中庸、中堅中庸、若手中庸です。まず、今回のメンバーでベテラン中庸に入るのは青木紳一九段、三村智保九段、河野光樹九段、溝上知親九段、井口豊秀八段、林子淵八段、我々つるりんの先輩たちです。
  • りん 歴代中庸だと秋山次郎九段や金澤秀男八段、潘善琪八段かな。
  • つる 金澤先生と潘さんは優勝されたのが結構前だからその時はベテラン中庸か中堅中庸かが微妙なところ。でも、次郎先生はそうだね。
  • しな 三村九段や溝上九段など、常連の方も多いですね。
  • つる その中で井口先生は初出場。我々世代的には早打ちで筋に明るく、天才として有名な先生です。いくらでも新たな強豪が出てくる、中庸戦の奥深いところですね。
  • しな 中堅中庸はいかがでしょう。
  • つる まさに我々つるりんと同世代から少し下を指します。正直、数年前までは堂々と中堅を名乗れたのですが、だんだんベテランに年齢が近づいてきて怖いです(笑)。
  • りん 張豊猷九段、松本武久八段、望月研一八段、安斎伸彰八段かあ。ザ・中庸戦だ!
  • つる 中庸戦がスタートした時から出続けている中庸戦の申し子みたいな人が多いですね。かくいう私もその一人でした(笑)。
  • しな では横塚力八段、安達利昌七段、伊藤優詩六段、稲葉貴宇五段、田中伸幸五段、大谷直輝五段が若手中庸ですね。
  • つる 毎年言っているかもしれませんが、30代はまだ元気だし、人によっては棋士として一番脂がのっている頃なんですね。なのでこのグループから優勝者が出る可能性は非常に高い。
  • りん 一般棋戦で上位に来るのは30代より下がほとんど。だけど中庸戦では一般論が通用しないところがあるのが面白い。
  • しな 毎回おっしゃっている「中庸らしさ」というやつですね。
  • つる その通り。例えば富士田明彦八段、タイトル戦の上位に食い込む強豪ですが、実は予選で敗退しているんです。昨年天元戦に挑戦した志田達哉八段でさえ、初出場時には優勝できなかった。
  • しな 一般棋戦で活躍しているかだけでは中庸戦で優勝できるかどうかは決まらないんですね。
  • りん そういうこと。やっぱり人生の味わいが出てこその中庸だと思うんですよ。ウニくん(鈴木八段)もなんだかんだアラサーよりもアラフォーに近づいて、いい感じに疲れてきてから優勝してるから。
  • しな うわさをすれば、ちょうど鈴木八段がいらっしゃいました。ここからは3人で優勝予想をしていただきましょう。

中年の星は誰だ!ウニつるりんが大予想―SGW杯中庸戦10/31~11/1開催に続く

記・品田渓