幼稚園囲碁普及プロジェクト「いごフレンズ」の3つの狙い 経営改革報告(第9回)

 日本棋院は、幼稚園囲碁普及プロジェクト「いごフレンズ」(プロジェクトリーダー:大橋拓文常務理事)を始動しています。幼稚園・認定こども園で継続的な囲碁教室を実施し、子どもたちが自然に囲碁と出会える環境をつくる取り組みです。現在、東京都内・首都圏の5つの幼稚園で囲碁教室が開講しています。
 篤志家の寄附をきっかけに生まれた本プロジェクトには、3つの明確な狙いがあります。


狙い1:「考える楽しさ」を子どもたちに身に付けてもらう

 いごフレンズは、あそび感覚で囲碁を楽しみながら「考えることそのものの楽しさ」を体験してもらうことを第一の目的としています。次の手を考え、相手の意図を読み、盤面全体を把握するプロセスは、思考力・集中力を自然に育みます。また、囲碁への理解が深まる中で、問題解決力・空間認識力も身に付いていきます。
 台湾では「囲碁を打つと頭が良くなる」と広く認識されており、囲碁が子どもたちの能力向上に有効な手段として評価されています。日本でも同様の価値を届けていくことを目指しています。


狙い2:囲碁講師の指導力・コミュニケーション力の向上

 子どもたちに囲碁を好きになってもらうには、まず「楽しい」と感じてもらうことが不可欠です。そのためには、囲碁の強さよりも、子どもたちを観察し、理解し、個性に応じて指導できる力が求められます。
 また、子どもさんの成長や囲碁の効用を親御さんに伝えるコミュニケーション力も重要です。囲碁講師となる棋士や指導者が、こうした力を身につけることも本プロジェクトの大きな狙いです。
 現在、5名の講師が稼働し、さらに4名が活動開始に向けて準備を進めています。質の高い「習い事」は口コミによって自然に広がる時代です。そのためにも、囲碁講師が指導力・コミュニケーション力を不断に磨き続けることが不可欠です。


狙い3:囲碁普及のビジネスモデルを変革する

 本プロジェクトの運営事務局を担当している浅野康人氏は、幼稚園の「課外教室」に着目し、ご自身で囲碁教室を運営する中で、営業・集客・教材開発・保護者対応・月謝徴収などの実務を体系化し、「習い事」としての囲碁の事業性を確認した方です。
 従来の囲碁普及は、地域の囲碁ファンや棋士の熱意に支えられ、収益性を十分に考慮しない形が多かったように思います。しかし、持続的な普及活動を実現するには、価値に見合った対価をいただく仕組みが不可欠です。囲碁講師が、適正な対価を得て継続的に活動できる環境こそが、指導の質を高め、結果として囲碁人口の持続的増加につながるからです。
 いごフレンズでは、指導力とコミュニケーション力の高い囲碁講師が子どもたちの能力を伸ばし、その価値を正当に評価していただくことを重視しています。さらに、囲碁の効用が社会に広まることで、幼稚園にとっても園児募集の魅力となることを期待しています。
 子どもさん・親御さん・講師・幼稚園・地域社会・囲碁界全体、そして日本棋院の「三方よし」ならぬ「多方よし」を実現するビジネスモデルに挑戦しているのです。


プロジェクトの全国展開に向けて

 囲碁を覚えるのは子どもの時期が中心です。だからこそ、子どもさんと親御さんの囲碁ファンを増やすことは、囲碁界の未来に直結します。現在は東京都内・首都圏での実証段階ですが、教室運営や指導体制の標準化を進めながら、全国展開を目指します。
 本プロジェクトは、囲碁普及の質と持続性を両立させる新しいビジネスモデルへの転換を図る、日本棋院の経営改革の一環でもあります。新しいアイデアなので、実際の教室運営を通じてモデルの検証と改善を進めているところです。
 なお、本プロジェクトでは、導入にご関心のある私立幼稚園・認定こども園とのご縁を広く求めています。お知り合いの園でご関心をお持ちいただけそうな場合は、ぜひ運営事務局までご紹介ください。担当者よりご説明・ご提案に伺います。
 いごフレンズの運営事務局へのご連絡は、次のサイトからお願いいたします。

 なお、日本棋院からの報道発表を受けて、棋士・指導者の方々から本プロジェクトへの問い合わせが寄せられています。申し訳ないのですが、本プロジェクトでは、まずは既存教室での実証と運営モデルの確立を優先しています。一定の成果と再現性の見通しが立った後、講師の本格的な募集や研修体制の整備に着手し、全国展開に向けた体制づくりを進めていく予定です。その旨ご了解のほどお願い申し上げます。



浅野氏の囲碁教室の模様
(子どもたちが楽しんでいる様子、考えている様子が伝わってきます)

稲田 修一(技術経営士 情報未来創研代表)
総務省で、モバイル、セキュリティ、情報流通などの政策立案や技術開発業務に従事。東京大学特任教授として、IoT/データ活用によるビジネス革新や価値創造について研究。一般社団法人情報通信技術委員会で、標準化推進業務に従事。早稲田大学教授として、研究マネジメント業務に従事。現在、コンサルティング活動の他、東京観光財団「東京都次世代型MICE推進会議」委員、スマートIoT推進フォーラム「IoT価値創造推進チーム」リーダー、日本棋院理事などとしても活動。