棋士が選んだこの一手

星合志保が選んだこの一手

放映日 2021年8月9日
棋戦名 第69回NHK杯戦2回戦 総譜はこちら
対局者
(段位は当時)
黒 一力遼NHK杯
白 佐田篤史七段



  • 一力遼NHK杯
  • VS

  • 佐田篤史七段


< テーマ図(黒番) >
 私が選んだ碁は第69回NHK杯戦の一力遼NHK杯vs.佐田篤史七段戦です。私はこの時、解説の聞き手として観戦していましたが、テーマ図の白14にサガられて、黒がこの後どうやってサバくつもりなのかさっぱり分かりませんでした。しかし一力さんは黒1と打ち込んだ時からこの展開は読んでいたはず。案の定すばらしい一手を用意していました。
  • < 1図 >
     一力さんが放ったのは黒1のコスミ。これが絶妙手で今でも忘れられません。次に黒aと打てば連絡できるので――、
  • < 2図 >
     実戦は白2とさえぎりましたが、そこで黒3のツケコシから7までが一力さんの読み筋。黒aと生きる手が残ったのが黒▲の効果です。取りに行くなら白8でaと打つしかありませんが黒13と切られると外側の白が持ちません。佐田さんはやむなく取ることを諦めましたが、そうなると左上の白が生きていないので大変です。白16、18と援軍を送っている間に黒19まで上辺で戦果をあげて黒が勝勢になりました。
  • < 3図 >
     1図の黒1で1から5までを先に決めるのは白6と守られてしまいます。後から黒7とコスんでも白8で黒は生きられません。
  • < 4図 >
     では実戦の黒1のコスミに白2なら黒はどうするのかというと、黒3のツギを利かして5という手を用意しています。白6には黒7、9できわどく脱出。黒aが利いているところなので白はbに打てないのです。
     初めに戻って1図のタイミングで黒1とコスんで様子を聞くのが絶妙でした。一手30秒のNHK杯でこんな手が打てるなんて凄すぎます。このコスミは私が今までに見てきた碁の中で一番印象に残っています。

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